今回は新たに公表された新々公益会計基準など事業の運益に係わる会計事項を取り上げます。
1 新々公益会計基準
平成16年10月14日新「公益法人会計基準」が発表され、 平成18年4月1日以後開始する事業年度からできるだけ速やかに実施するものとされていますが、 これが「公益法人等の指導監督等に関する関係省庁連絡会議申合せ」であることからも分かるように、 これは旧主務官庁の指導監督を背景とするものです。
その後公益法人制度改革3法が成立したことから、公益法人会計基準の基本的な枠組みを維持しつつ、 新制度との整合性を図り、本年4月11日内閣府公益認定等委員会から新たな「公益法人会計基準」が示され、 同時にその「運用指針」が示されました。平成16年基準を「新」とすると、 「新々」会計基準ということになります。
(1) 適用対象
- 公益社団法人又は公益財団法人
- 一般法人移行認可を受け公益目的支出計画実施中の一般社団法人又は一般財団法人
- 公益法人移行認定又は一般法人移行認可を申請する特例民法法人
- 公益認定を申請する一般社団法人又は一般財団法人
つまり、新々基準が適用されるのはこれらの申請の際からです(整備法60条)。
(2) 実施時期
平成20年12月1日以後開始する事業年度から実施するものとするとされていますが、 特例民法法人が公益法人への移行認定又は一般法人への移行認可を申請する場合には、 平成20年12月1日以後開始する最初の事業年度に係る財務諸表は、 平成16年度会計基準で作成することができます。
2 法律と会計基準
(1) 公正妥当な会計慣行とは
この度の改正で、一般法人法に、会計は一般に公正妥当と認められる会計慣行に従うものとする という規定が設けられました(同法119条、199条)。
民法にはこれに相当する規定はありませんでした。したがって、従来の「公益法人会計基準」は 指導監督上のものでしたが、今後はこのような法的義務を負うこととなり、 「公益法人会計基準」の位置づけが変わりました。
もっとも、一般法人(一般社団法人、一般財団法人)は、共益法人を含み必ずしも公益法人 (公益社団法人、公益財団法人)とは限りませんので、この「一般に公正妥当と認められる会計慣行」が 「公益法人会計基準」を指すとは限りませんが、公益法人については、これを指すと解していいでしょう。
(2) 計算書類体系と財務諸表体系
ところで公益法人会計基準と一般法人法(内閣府令を含む。)の計算規定を比較すると、 書類の名称からして食い違っています。
計算書類 |
財務諸表 |
||
一般法人 |
公益法人 |
公益法人 |
|
計算書類等
|
貸借対照表 |
〃 |
貸借対照表 |
損益計算書 |
〃 |
正味財産増減計算書 |
|
キャッシュ・フロー計算書 |
キャッシュ・フロー計算書 |
||
財産目録 |
財産目録 |
||
事業報告 |
〃 |
||
附属明細書 |
〃 |
||
事業計画書 |
|||
収支予算書 |
(注)
- 「計算書類等」中の太字が「計算書類」又は「財務諸表」
- 「キャッシュ・フロー計算書」は、会計士監査法人のみ。
- このほか、内部管理事項として「収支計算書」があります。
公益法人会計基準には、「事業計画書」もなければ「収支予算書」もありません。 公益法人会計基準には、「正味財産増減計算書」はありますが「損益計算書」はありません。 一方は「財務諸表」といい、一方は「計算書類」と呼んでいます。
これは公益法人会計基準が外部報告を目的としていることと、一般法人法の計算規定が公益法人以外の 共益法人にも共通の計算規定として定められているからです。
したがって、次のように理解することとなります。
- 計算に関する法令の規定がある場合には、それが優先し、それに拘束される。
- 公益法人については、「正味財産増減計算書」が「損益計算書」に相当する。
なお、特例民法法人は、申請するまでは、従前どおりです。
3 会計基準変更の公益活動への影響
会計基準の中には、その変更が公益活動・事業計画に影響するものがあります。 また、特定費用準備金を計上するためなど会計規定の整備も大事です。
(1) 退職給付会計
退職給付会計を導入すると、会計基準の変更に伴う差異が生じますが、これについては、 平成20年12月1日以後開始する最初の事業年度から12年以内に定額法により 費用処理するものとされています(運用指針)。
(2) 減価償却
新基準から強制償却となっていますが、過年度分の減価償却費は、 適用初年度に全額を一括して計上するのが原則です。ただし、適用初年度の帳簿価額を取得価額とみなし、 以後減価償却を継続する方法も認められます。このただし書きによるときは、耐用年数は、 その資産の耐用年数から経過年数を控除した年数になります(運用指針)。
(3)時価評価
資産の時価が取得原価より著しく低く、回復の見込みがないときなど時価評価が必要ですし、 取立て不能額の計上なども必要です。これらにより損失が生じます。
(4) 収益事業等から公益目的事業への繰入率
50%ですが、収支相償や遊休財産額の計算を通じて公益活動を制約します。