- 社員は社員総会で議題の追加を請求できないですか
- 書面による議決権の行使等と決議の省略は、どう違うのですか
- 採決は、拍手でもいいですか
- 選挙の結果、理事定数に満たない場合は、どうすればいいですか
- 評議員と理事では選任方法が違うのですか
- 評議員、理事の充て職は、認められますか
- 代表理事については「選任」でなく「選定」というようですが、どう違いますか
- 法人は、目的の範囲内でしか活動できませんか
- 手続に違反した社員総会等の決議は、すべて無効ですか
- 招集手続に違反があっても、社員総会等の決議は取消し得るだけですか
- 特別の利害関係を有する社員は、議決から排除してもいいですか
社員・評議員は、理事に対し、一定の事項を議題とすることを請求することができますが、理事会非設置一般社団法人を除き、その請求は社員総会についてはその6週間前まで、評議員会についてはその4週間前までにしなければなりません(法人法43、 184)。したがって、当日、議案(修正動議)を提出することはできますが、議題の追加を請求することはできません。
なお、社員総会については、この請求ができるのは、総議決権の30分の1以上の議決権を有する社員に限ります。
次のとおりです。なお、議決権の代理行使、書面決議は、評議員会及び理事会については認められていません (社員総会・評議員会、理事会は、どう運営すればいいですか)。
また、従来のいわゆる「持ち回り決議」は、書面決議のような法令の根拠がなくなっており、もはや認められません。
決議の省略を「書面決議」と呼ぶこともありますから混同しないようにご注意ください。
法律は、普通決議とか決議要件は定めていますが、その採決方法までは制限していません。したがって、決議要件に達していることが確認できるのであれば、拍手、挙手、起立、投票その他どういう方法でも差し支えありません。理事会の決議については、議事録に異議をとどめない参加理事は、その決議に賛成したものとの推定を受けます(法人法 95⑤、 197)。
もちろん選挙によることもできます。その場合は、選挙によるかどうかを毎回諮ることもできますし、その候補者は立候補とは限らず、推薦によることもできます。
定款に特に制限がない限り、不足する理事を補充する選任案を追加して提出すれば足ります。逆に言うと、選挙による場合、そういう場合を想定した規程を整備しておくべきです。
違います。
- 理事については、法律は社員総会又は評議員会の決議によって選任すると定めていますが、評議員については、定款に記載しなければならないと定めているだけで( 法人法153①八)、その選任方法自体については、何も定めていません。ただし、理事又は理事会が評議員を選任することはできません(法人法153③)。
- モデル定款は、評議員の選任方法として、①理事に準ずる資格制限を設け、評議員会で選任する方法と、②外部委員を含む評議員選定委員会で選任する方法との二つの方法を例示しています。
- いずれの場合も理事会で評議員候補者案を決定し、評議員会又は評議員選定委員会に推薦することは差し支えありません。
- なお、理事と評議員は、理事はその法人等の使用人を兼ねることができますが、評議員はその法人等の理事、監事、使用人を兼ねることができない(法人法173②)点でも違います。
いわゆる「充て職」とは、ある職にある者を当然に別のある職に就けることをいいます。この意味での「充て職」は法人格が独立している以上考えられません。しかし、慣行としてある職にある者を別のある職に就けることも「充て職」として行われており、これは、法人の選任・選定機関の自主判断によります。
「選定」は、既に法人の機関に就いている人の中から一定の機関に就けることをいいます。これに対して、「選任」とは、そのような制約がなく、それによって初めて法人の機関に就けることをいいます。
したがって、社員総会や評議員会で役員や評議員をその職に就けるのは「選任」、既に理事の職に就いている者の中から理事会が代表理事や業務執行理事の職に就けるのは「選定」です。「それによって初めて法人の機関に就ける」には、再任(重任)を含みます。
なお、「互選」とは、選ぶ者と選ばれる者が同じである場合のことです。したがって、理事の互選によりとは、理事の中から理事が選ぶことです。
できません。
民法は、「法人は、法令の規定に従い、定款その他の基本約款で定められた目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う。」と定めています(34条)。これを法人の権利能力(行為能力)といいますが、法人は目的の範囲外ではいくら活動しても代金請求権を取得できませんし、雇用も何もかも無効です。つまり活動能力がないわけです。
社員総会等の決議がその前提となる会議の成立要件や手続要件を欠くときは、本来は無効となるはずです。しかし、この点についても、今回、規定が整備され、次のようになっています(法人法265条~)。したがって、手続に何らかの違反があったからといって必ずしも無効になるとはいえません。しかし、決議の内容が法令に違反しているときは無効です。
なお、無効と取消しでは、法律上の扱いが全く違います。取消しは、取消されるまでは有効であり、決議の日から3月を経過すると取消しの訴えができなくなり、有効と確定します。
ただし、これらは、理事会の決議には適用がありませんからそれにこれらの瑕疵があるときは当然無効となります。主張の時期、方法等の制限を受けません。
そうとは限りません。
招集の手続が法令又は定款に違反していても、通常は、取消し得るだけですが(前表)、瑕疵の程度が著しいときは(例えば、ほとんどが通知漏れ)、そもそも会議が存在したとは認められないことがあり、決議の不存在となります。
これらを例示すると、次のとおりです。
旧制度ではそのように定められていましたが(改正前民法66)、新制度では特別の利害関係がある者の議決権の行使については、次のようになっています。
社員総会・評議員会及び理事会の決議を省略する場合の同意を要する者の範囲もこれと同様です。
したがって、議決権を奪ってはいけません。新制度では、特別の利害関係を有する社員の議決権の行使を認める一方、それによって決議が著しく不当となったときは、その取消しの訴えができることとしています(招集手続に違反があっても、社員総会等の決議は取消し得るだけですか)。自主的に議決権を行使しないのは、何ら差し支えありません。