公益法人の貸借対照表は、資産を正味財産とひも付きで捉えており、このため資産の分類も独特です。今回はこれらの相互関係等を説明します。
- 公益法人の貸借対照表は
- 貸借対照表には3つの大きな特徴がある
- 指定正味財産と一般正味財産はどう区別するのですか
- 基本財産と特定資産はどう区別するのですか
- 「○○引当資産」などは何と結びついているのですか
- 指定正味財産の基本財産等充当額は内数ですか
- 基本財産、特定資産は指定正味財産等とどう結びつけるのですか
次のようなものです(様式:公益法人会計基準の運用指針(H20.4.11))。
ⅰ 正味財産のひもつき管理
それぞれの「正味財産」には基本財産、特定資産への充当額が表示されるように、正味財産はこれらの資産とひもつきで捉えられています。
ⅱ 資産の分類が特殊です
「資産の部」は、形式的には企業会計と同じく、「流動資産」と「固定資産」の2区分ですが、実質的には正味財産のひもつき管理のために3区分になっています。
つまり、次図のように、先ず正味財産充当額に対応する広義の基本財産(「固定資産」の「(1)基本財産」及び「(2)特定資産」)を特定し、それ以外の運用財産を「流動資産」と「(3)その他固定資産」に分類する仕方です。
企業会計でも長期性預金は固定資産に計上しますが、これとは捉え方が違います。たとえ現金でもそれが基本財産、特定資産なら基本財産、特定資産とするのです。貸借対照表では「○○引当資産」とか「○○積立資産」という表示になっていますが、実体は現金預金等です。したがって、公益法人の貸借対照表では、同じ現金預金、土地、建物等でも3箇所に分かれて表示されることになります。
ⅲ 外部債務である基金が正味財産の部に計上される
一般社団法人(公益社団法人)は基金を募集することができます(一般法人法131条)。これは返還義務を負うもので外部債務の一種ですが、利息を付することができず(同法143条)、正味財産の部に表示しなければなりません(同法施行規則31条)。これについても基本財産充当額、特定資産充当額がうち書き表示されます。
指定正味財産とは、寄付によって受け入れた資産で、寄付者等の意思により当該資産の使途が制約されているものをいいます(会計基準注解・注6)。しかし、資産の目的拘束は法人自身が行う場合もあり、寄付によって受け入れた資産以外の資産(例えば、稼得資産)について行う場合もあり、指定正味財産と一般正味財産は、次のように区別します。
どちらも一定の目的のために保有する目的拘束財産ですが、基本財産とは、定款において基本財産と定められた財産をいいます(公益法人会計基準の運用指針12(1))。それ以外の財産は特定資産です。また、基本財産の財源は指定正味財産とは限らず、一般正味財産を財源としても設定できます。したがって、過去の事業の成果である一般正味財産を財源として基本財産を追加して設定することはできますが、それは定款で定める必要があり、理事会決議等によって設定した場合には、それは基本財産ではなく特定資産です。
なお、基本財産制度が大きく変わっており、基本財産自体がはっきりしないところがありますが、何をどのように目的拘束するかは原則として法人自治に属します。
「○○引当資産」等は、負債項目である「○○引当金(減価償却累計額)」等と結びついています。これは支払準備のための特定預金等で引当金等の範囲内で任意に設定するものです。
基本財産、特定資産それぞれへの充当額は指定正味財産額の内数ですが、充当額の合計は必ず指定正味財産額と一致し、内数ではありません(会計基準注解・注4)。
指定正味財産額=基本財産充当額+特定資産充当額
これに対し、一般正味財産、基金の基本財産等への充当額は、合計でも一般正味財産、基金の額と一致する必要はなく、合計でも内数です。
一般正味財産額≠基本財産充当額+特定資産充当額
基本財産、特定資産は指定正味財産、一般正味財産、負債とひもつき管理になっています。更に基金がある一般社団法人(公益社団法人)の場合は基金とも結びつきます。
これらの結びつきは、先ず個別に特定可能な指定正味財産を財源とする基本財産(A)及び負債を財源とする特定資産(B)を特定し、次に(基本財産-(A))を一般正味財産を財源とする基本財産(C)とし、残余の指定正味財産である(指定正味財産-(A))を特定資産(D)とし、最後にそれ以外の特定資産を一般正味財産(E)とするという考え方で特定します。