(http://pref.akita.lg.jp/www/contents/1213166757453/files/jirei20100712.pdf)
- どういう傾向が見えますか
- 同業者団体で公益認定を受けたのはどういうところですか
- 同業者団体が公益認定を受けるポイントは何ですか
- 受託事業、指定管理業務で公益認定を受けたのはどんな事例ですか
- 施設の公益目的外貸与とは何ですか
- 公益目的事業を収益事業等として申請できますか
- 2件の不認定理由は何ですか
- その他の認定事例等にはどんなものがありますか
- 公益認定341件に対し不認定2件ですから不認定割合は0.6%と低いこと。
- 公益認定を受けることは中々むつかしいといわれ、ことに同業者団体はむつかしいといわれていますが、それと思われる認定事例がかなり出ており、行政の受託事業、公の施設の指定管理業務の認定事例もかなりあること。
- 特例民法法人から一般法人へ移行認可が81件(移行割合21.5%)ある一方で、新規に一般法人を設立し、公益認定を受ける動き(46件)も活発であることが窺えます。
どこまでが同業者団体かは一概にはいえませんが、関連類似のものも含めて例示すると、福祉士や鍼灸マッサージ師、歯科医師、獣医師、不動産鑑定士といった特定業種に係る団体、溶接業や刀剣業、下水管路事業、ビルメンテナンス業、木材業、商店街といった特定の業界に係る団体、グループホームや老人ホーム、浄化槽に係る団体などが公益認定を受けています。いずれも同業者の利益の増進ではなく、不特定多数の利益の増進に寄与することを公益目的事業として認定を受けているものです。
当然すべての基準をクリヤーしなければなりませんが、最大のポイントは、公益目的事業の位置づけです。
ⅰ 同業者的団体の事業には複数の側面がある
同業者的団体が行う事業は、それが不特定多数の者の利益の増進に寄与する事業であったとしても、それが同時に同業者の利益の増進に繋がるという側面があります。言い換えると、同業者的団体の事業だからといって同業者の利益の増進に寄与するばかりだとはいえず、不特定多数の者の利益の増進に寄与する事業もあります。
ある程度広域的な団体になると、前者より後者の色合いが強くなるのが一般的でしょう。例えば、個別商店街の事業活動は当該商店街ないしはそれに属する商店という特定の者の利益の増進が目的となるでしょうが、その連合組織となるとそれを事業目的とすることは公平上困難となり、全域的な、街づくりとしての商店街形成や都市アメニティー、地域の活性化としての商業振興とかが目的となるはずです。
また、認定事例からも、ある業種、業界の技術水準の維持向上が国民の暮らしや健康、安心、あるいは良好な都市形成や国土形成に貢献するという側面があることが窺えます。
ⅱ 複数の側面をもつ事業の場合の公益目的事業の捉え方
このような複数の側面をもつ事業の場合、公益目的事業をどう捉えるかですが、認定法では、①収益事業等でないものを公益目的事業と定義しているのではなく、公益目的事業でないものを収益事業等と定義しており(公益目的事業に必要な収益事業は公益目的事業ですか)、②公益目的事業とは、法定の事業に該当し、不特定多数の者の利益の増進に寄与する事業であればいいわけですから、それが結果として、あるいは副次的に特定の者の利益の増進に繋がったとしても、公益目的事業であることには変わりありません(公益目的事業と収益事業等の両方に該当するものはどちらですか)。
つまり、問題の焦点は、公益目的事業に当たるかどうかであって、収益事業等に当たるかどうかではありません。認定事例の公益目的事業を検討すれば明らかなように、同業者的団体の事業であっても、それが公益目的事業として構成できればいいわけですから、ある程度広域的な団体や公益的事業を主体としている団体については、公益認定が受けられる可能性が高いと見られます。同業者の利益の増進を主とするのでは公益目的事業に該当しませんが、結果として、そういう側面があったとしても公益目的事業は公益目的事業です。
ⅲ ポイントは目的と事業の合目的的位置づけ
したがって、不特定多数の者の利益の増進に寄与する事業であることを明らかにしなければなりませんが、そのポイントは概ね次の二つに集約されるとされています(チェックポイント第2-2)。
すなわち、一つは事業目的であり、「不特定多数でない者の利益の増進への寄与を主たる目的に掲げていないか」を確認するとしています。これは、言い換えると、不特定多数でない者の利益の増進への寄与を目的に含んでいてもそれが主たる目的でなければいいということです。
そして二つ目は、「事業の内容や手段が事業目的を実現するのに適切なものになっているか」を確認する事業の合目的性です。すなわち、目的と事業の内容、手段の妥当性、整合性が目的の観点からチェックされるわけです。
したがって、事業目的が不特定多数の者の利益の増進への寄与となっていても、事業の内容や手段が事業目的を実現するのに適切でなければ公益目的事業とは認められないということになります。したがって、公益目的事業の位置づけのポイントは、事業の合目的的位置づけということになります。特に、目的は目的、事業は事業と捉えるのではなく、相互の合目的的関係に十分意を用いる必要があります。
行政からの受託事業、公の施設の指定管理業務で公益認定を受けたのはどんな事例ですか。その場合に、公益目的事業は、どう捉えればいいですか。
ⅰ 既に多数の認定事例があります。
行政からの受託事業や公の施設の指定管理業務は公益目的事業自体ではなく、その一形態、手段に過ぎないため、公益目的事業として直接には表現されていないことから、これらの公益認定は、一見見えにくくなっていますが、管理の業務や文化・スポーツの振興、生涯学習や防災、栽培漁業や産業振興等多様な形の公益目的事業として、これらの業務を主体とする法人が既にかなりの数で認定を受けています。
ⅱ 公益目的事業の捉え方
公益目的事業の捉え方は、同業者団体の場合と同様です。すなわち、この場合も事業に複数の側面があるということです。例えば、高齢者で構成する、町の美化を推進する公益法人が行政から公園や公衆トイレの清掃や除草の業務の委託を受け、これを実施した場合、これにより不特定多数の住民が直接に利益を受けます。しかし、委託契約に即していえばこれによって利益を受けるのは当事者である行政であり、当該法人ということにもなります。この場合には、同業者の利益の増進ではなく、自己の利益の増進すなわち収益事業ではないかということが問題になるでしょうが、これらの法人の目的、業務の性格からいって、その公益性の側面に焦点を当て、それを公益目的事業に構成し、公益性の説明をすることは、一般的には、容易なはずです。認定事例はこれを示すといっていいでしょう。
ⅲ 公益目的事業はそれ自体を直接的に表現すれば足ります。
行政機関からの受託事業であってもそれだけで公益目的事業であるとはいえないといわれていますが(FAQⅨ-①)、これは、公益目的事業であるかどうかは、それが受託事業等であるかどうかによって決まらないということです。したがって、公益目的事業を受託事業等と関連付けて規定しても意味がありません。受託事業等は目的実現の手段であり、一形態に過ぎず、受託自体が目的ではありません。例えば、不特定多数のために生涯学習を推進するとして、必要なことは生涯学習を実施することであって、それを自前でやるか、収入を得て受託でやるかは本質的なことではありません。大事なのはそれを儲けるためにやるのか、みんなのためにやるのかです。認定事例のほとんどが公益目的事業自体を捉え、受託事業との関係を表現していないのはこのためです。
認定事例の収益事業等に「施設における公益目的外事業」とか「施設を公益目的とした事業以外で貸与する事業」とかいうのがありますが、これは何ですか。事業活動のための貸与は公益目的事業にならないということですか。
公益目的事業となる施設の貸与とは、公益目的のために、施設を個人、事業者等に貸与する事業です(チェックポイント第2(11))。したがって、施設は、不特定多数の者の利益の増進を図ることを主たる目的とする公益目的施設です。また、貸与はこの設置目的に沿った使用ということになります。したがって、空いている圃場の貸与など施設を効率的に利用するためにする目的外での貸与は公益目的以外での貸与です(チェックポイント第2(11))。
しかし、この設置目的は、施設により異なり、文化やスポーツの振興を目的としているものもあれば、産業の振興を目的としているものもあります。したがって、文化、スポーツ施設における企業の経済活動のための使用は目的外使用になるでしょうが、産業振興施設における企業の経済活動のための使用は目的に沿った使用であり、事業者に対する貸与だからといって公益目的以外での貸与となるわけではありません。したがって、何が公益目的での貸与で何が公益目的以外での貸与かは施設により異なりますが、認定事例の収益事業等にある「施設における公益目的外事業」とか「施設を公益目的とした事業以外で貸与する事業」とかは、この公益目的以外での貸与を指します。貸与先による区分(FAQⅨ-③)もこれですが、これは必ずしも貸与先の法人の種類だけで決まるわけではありません。
また、社会福祉法人、学校法人、宗教法人等の公益的な活動をしている法人の使用は、一般的には、公益目的での使用ですが、それが公益目的での貸与になるかどうかは施設によって違いますし、公益的な活動をしている法人の使用であっても、当該法人の収益事業、共益事業等のための使用は公益活動のための使用ではありません(FAQⅨ-③、④)。施設の設置目的は、市民ホールのように広く市民、事業者等に開放されているもの、消極的に営利活動を排除しているに過ぎないもの、積極的に文化やスポーツ、産業の振興を目的としているものなど様々です。
公益目的事業でないものを公益目的事業として申請することはできませんが、公益目的事業のうち何を公益目的事業として申請するかは法人の任意です。公益認定はそれが認定基準を満たしているかどうかの認定であって、すべての公益目的事業を公益目的事業として申請することまで求めているわけではありません。一部の公益目的事業を収益事業等として申請してもそれで認定基準が満たされているならば公益認定されます(認定法5)。この意味では、公益目的事業は、分類するものではなく、決定するものです。
したがって、認定事例にある事業が収益事業等になっていたとしても、それは必ずしも当該事業が公益目的事業でないという意味ではありません。
収益事業等については、収支相償その他の規制がありませんから100%公益目的事業の法人であっても一部を収益事業等として申請するなどこれは十分考えられることです。
1件は公益目的事業比率が50%に達しないことが理由であり、他の1件は遊休財産額の保有の上限額を超えることが理由となっています。次のような点が窺えます。
- 公益目的事業比率が50%に達しないことを理由として不認定となった1件は、申請に係る事業のうち二つの事業が「業界関係者のために情報を収集し提供するものにすぎない」ものであり、「申請法人及びその会員会社のための宣伝を主眼とするものである」ため不特定多数の者の利益の増進に寄与するものとはいえず、公益目的事業に当たらないと認定されたことによるものです。
- 同じ関連業界の別法人は、同じ時期に公益認定を取得していますが、不認定法人は「目的」中に「○○業の健全な発展を図ることにより」としているのに対し、認定を受けた別法人のそれにはそのような目的は掲げられておらず、「公益目的事業」についても、不認定法人が「○○業の経営に関する資料について調査研究を実施することで、国政の健全な運営の確保に資する事業」等としているのに対し、別法人は単に「○○業の経営に関する調査研究」としているという違いが見うけられます。
この経営調査に関し、不認定理由は当該調査が不特定多数の者の利益の増進になるかについては、申請書等に照らしても理解することができない旨述べていますが、「国政の健全な運営の確保」に資したかどうかが問われているのでしょうか。いずれにしても、ここで問題にされているのが事業の合目的性であることは明らかです。
- この認定は、当然のことながら客観的、実質的になされます。しかし、余りに過去の実績、実態にこだわると、特例民法法人が「生まれ変わる」ことや新規法人とのバランスが問題になるでしょう。新規法人の公益目的事業等を見ると、公益目的事業等が極めてシンプルであることが目に付きます。なおざりということはないでしょうが、これらのバランスが今後の課題かもしれません。
奨学その他各種支援や学術、文化、スポーツの振興など多様で、青年会議所や拳法連盟、元ゴルフ倶楽部や認知症の家族会などもあります。更に、次のようなものもあります。
- 認定を受けた公益目的事業の中には出版に係る事業があります。ただし、これについては、法人により収益事業等としているものもあり、法人により目的、頒布形態、対価等が違いますから一概にはいえませんが、出版に係る事業であっても公益目的事業となる場合があることは確かです。
- 共済制度の運用事業が認定されています。一般的には、共済事業は、共益事業といわれていますが、これは災害を契機に公が設定した共済制度を運用するもので、潜在的に不特定多数の者がその対象となりうる場合には不特定多数の者の利益の増進に寄与するという考え方によるのか(FAQⅨ-⑥)・あるいは公の制度だからというのかわかりませんが認定されています。これに類するものは全国的には他にもあるでしょう。
- 逆に、ほとんどの法人が収益事業等としているものに販売事業等があります。しかし、災害支援事業としての医薬品の低価販売とか公益目的事業に当たるものがあるように思われます。他の事業の中にこれらが含まれている可能性はあるように思います。