公益法人会計は、平成16年の基準改正で、正味財産計算書がストック式からフロー式に統一され、財産法から損益法に、財産の管理から経営の管理へと、事業の能率・効率を重視する計算体系に変わりました。収支計算書も財務諸表から除かれました。しかし、実際は、「収支予算書(計算書)」は、「内部管理事項」として現在も作成が必要ですし、公益法人になるとこれとは違う「収支予算書(計算書)」の作成が必要です。
1 内部管理事項としての収支計算書
旧基準の公益法人会計は、財産の収支計算体系です。「収支計算書」はこの一翼を担うものです。この点が「キャッシュフロー計算書」とは本質的に違います。
平成16年基準から「収支計算書」は、財務諸表から除外されましたが、「内部管理事項」上必要なものとして作成が求められています。この「内部管理事項としての収支計算書」は、収支を事業活動収支、投資活動収支、財務活動収支に3区分するなど従来の収支計算書とは様式が違いますが、その本質は同じです。
この「収支計算書」は、「キャッシュフロー計算書」とは、次の点で違います。(1)「収支計算書」は、すべての資産・負債を「資金」と「非資金」に2分し、その増減を測定する財産法の系譜のもので、(2)「資金」には資産(現金ないし現金同等物および短期金銭債権)だけではなく、負債(未収金その他の短期金銭債務)も含みます。負債も「資金」の一部である「負の資金」と捉えています。(3)「キャッシュフロー計算書」は現金主義のものですが、公益法人会計の「収支計算書」は発生主義によるものです。
2 損益計算ベースの収支計算書
結局、「内部管理事項としての収支計算書」は、収支計算ベースのものです。しかし、公益法人が作成しなければならない「収支予算書」は(認定法21条)、従来のものとは本質的に違い、損益計算ベースのものです。従来のものでは間に合いません。
(1) 損益計算ベースの収支計算書とは
損益ベースの収支予算書したがってその収支計算書とは、収支を「経常収益」「事業費」「管理費」「経常外収益」および「経常外費用」に5区分したものです(認定規則30条、FAQⅥ-4-⑥)。これは「収益」「費用」の概念によるもので損益計算予算です。したがって、「収支」といっても、実体は損益計算であり、「資金」の収支を伴わない減価償却費や退職給付引当金の繰入額等の「費用」を「支出」とするものです。したがって、実体的には、正味財産増減計算書と同じです。この様式は特に定まっていませんが、正味財産増減計算書に倣えばいいといわれるのはこのためです。
(2) 予算統制と損益外取引
公益法人になると「収支予算書」の捉え方が従来とは全く変わりますが、これについては、もう一つ問題があります。
そもそも「収支予算書」は、予算統制の手段であり、すべての収入・支出を計上しなければならないと考えられてきましたが、「収支予算書」が「損益計算ベースの収支予算書」になると、これから漏れる収支がでてきます。すなわち、損益外取引に係る収支です。例えば、固定資産の取得や長期借入れです。これらの収支は正味財産には影響がなく、損益計算書(財産増減計算書)にも貸借対照表にも載りません。したがって、「収支予算書」を損益計算ベースのものにすると、これらを予算統制の枠外に置くのかという新たな内部統制の問題が生じます。これは「収支予算」を「収益的収支」と「資本的収支」に2分し、予算統制体系を維持するのがいいと思いますが、これを含めて以上に関しては「実践課題Q&A」で具体的に取り上げる予定です。