一般法人も公益法人も複数の事業等に関連する「共通」の収益費用は適正に配分しなければなりません。その配分計算の仕方を説明します。
- 収益は任意の事業等に配分していいですか
- 特定の事業の専従者がいる場合、給料の配賦率は、どう計算するのですか
- 前年度と配賦率が違います。その違いをどう捉え、どう説明すればいいですか
- 公益目的事業の用に供している車の修繕費は、その事業費に配賦していいですか
- 配賦基準は、必ず資産の会計区分と一致しなければなりませんか
- 配賦基準を定めるためには、そのためのデータを収集しなければなりませんか
- 職員数比と従事割合はどう違うのですか
- 使用頻度が違いますが共用の会議室の費用は、面積比で均等配賦していいですか
- 給料は利用者数に連動させるべきでしょうか
できません。これも移行前と大きく違う点の一つです。
一般法人と公益法人とで違います。例えば、使途の定めがない寄附金は、一般法人では、法人が実施事業収入と定めない限り、実施事業の収入とする必要はありません。しかし、公益法人の場合は、寄付者が使途を公益目的事業以外の事業等と定めたもの以外のものは公益目的事業の収入としなければなりませんので、使途の定めがない寄附金は、公益目的事業の収入となります。これらについては、(5.収益、費用の配分と資産、負債の区分とは関連がありますか)、(9.一般法人ですが収益の配分は公益法人と同じですか)をご覧ください。
また、収益費用の配分は、資産の区分とも関連しています。この点も従来とは違います(会計処理によってどういう有利不利が生じるのですか)。
職員数5名で、うち3名はA事業に専従しています。他の2名はA事業とB事業に30%と50%、法人の管理運営に20%従事しています。A事業専従者の給料は1人300万円、他の2名は1人360万円です。給料は従事割合で配賦したいと考えていますが、この場合、配賦率はどう計算するのですか。
- 配賦率は比率であって、職員数とか従事時間とか面積とかではありません。無名数です。
- 決算につながっている勘定科目ごとの配賦基準(実際に必要な勘定科目ごとの配賦基準とは)と配賦額とは、次のような関係になっています。
- 複数の基準により配賦する場合でも最終の配賦率は一つにまとめなければなりませんし、この式を満たすものでなければなりません。
- 設問の場合、配賦基準は、2つの基準からなります。A事業専従者の給料は100%A事業に配賦すべき固有の費用ですから全額を直接配賦します。これに対して、他の2人の給料は、A、B事業と法人会計の共通費です。したがって、これについては、従事割合で配賦します。
- 次のようになります。
- 事業別決算(正味財産増減計算書内訳表)に表示されるのは、この最後の合計行だけです。配賦率も合計行の「11,160,000:3,600,000:1,440,000」又はこれを約した比となります。
- これから明らかなように、決算に結びついている科目別配賦率は、配賦基準ごとに配賦額を求め、それを事業別に集計した金額の比となります。従事割合とか面積比といっても必ずこうなります。つまり、金額をウエイトとして比の平均を求めるということです。
結論からいうと、先の配賦計算表の計算過程に沿って説明すればいいということです。
配賦率は、前年度とは、次の2つの場合に違います。
- 配賦基準ごとの費用内訳(「対象額」)の構成比が変わった場合
例えば、直接配賦費が増加又は減少した場合-この場合は、当該事業の費用がそれだけ増減し、配賦率(「合計」行)が変わります。
また、直接費に対する共通費の構成比が増減した場合、新しい配賦基準が増えた場合も変わります。
- 「対象額」に乗じる個々の配賦率が変わった場合
この場合は、個々の配賦額を通じて当然に最終の配賦率に影響します。
- したがって、単に費用の総額が変わっただけでは、科目別配賦率は当然には変わりません。
以上を踏まえ、ポイントを押さえた合理的な説明をすればいいでしょう。
一般の会計常識ではそうですが、一般法人・公益法人の会計では必ずしもそうはいえません。
一般法人・公益法人の会計では、資産を公益に関する事業の用に供する資産とそれ以外の資産とに区分しています。したがって、「それ以外の資産」を修繕しても、公益目的事業の事業費や公益目的支出にはなりません。
なお、公益法人の場合、公益に関する事業の用に供する公益目的保有財産には、財産目録等に表示してはじめて公益目的保有財産と認められるものと当然に公益目的保有財産扱いされるものとがあります。これによっても扱いは違うでしょう。
遊休財産額から除外される控除対象財産が複数の事業等の共用資産であるときは、法人において可能な範囲で事業等ごとに区分、分離し、財産を確定して、表示するとされており、その際、可能であれば物理的に特定し、それが困難な場合には、一の事業の資産として確定し、減価償却費等の関連費用は使用割合等適正な基準により按分するとされている(ガイドラインⅠ8(1)②)。つまり、備品Aの主な用途が公益目的事業である場合、備品Aは貸借対照表では公益目的事業資産とし、その減価償却費は使用割合等により他の事業等にも適正に配賦して差し支えないということです。したがって、この場合には、資産の会計区分と費用の配賦基準とは一致しません。しかし、この場合でも、事業等ごとの使用割合は定期報告書のC(2)表に記載することとされているので、実質的には、資産分類と矛盾した費用の配賦はできません。
これは共通負債である退職給与引当金等についても同様です(日本公認会計士協会・貸借対照表内訳表及び正味財産増減計算書内訳表の作成と会計処理についてⅢ3)。
その必要はありません。
配賦基準については、ガイドラインに例示されていますが、それ以外に法人が「適当と判断した基準があればそれを採用して」構わないとされており、「過去の活動実績、関連費用のデータなどから法人において合理的と考える程度の配賦割合を決めてもらえればよく、その算定根拠を詳細かつ具体的に記載することは求めていませんし、法人においてデータ採取等のために多大な事務負担をかけていただくことはありません。」とされています(FAQⅤ-3-②)。
これは例示ですからそれほどこだわる必要はないと思いますが、「職員数比」は人数を基準に、「従事割合」は従事量(従事時間)を基準にするという違いがあります。単位のとり方からすると、「職員数比」の方が少し荒いでしょう。「職員数比」が適用される費用として「福利厚生費、事務用消耗品費等」となっておりますが、福利厚生費には一人当たりで定められた法定外福利厚生費もありますし、「従事割合」の対象とされている給料手当等に比べると一般的に金額の重要性も低いでしょう。これらが考慮されていると思われますが、要は、法人の実体にあった適正な配賦基準を設定すればいいわけです。
会議室をA事業、B事業、法人管理で使用しています。使用する場合は、それぞれが全部を使用しますが、使用頻度が違います。会議室には、光熱水費、固定資産税などがかかっています。単純に使用面積で配賦すると均等配賦になりますが、それでいいですか。
使用頻度に明白な差があり、それが費用計算上無視できない程度のものであるときは、面積比に使用頻度を加味して配賦する必要があります。つまり、使用面積×使用頻度の累積使用面積比により配賦するのが適当です。そもそも面積比で配賦するのは、それが使用の実態に合っているからであり、有形固定資産だから面積比ということにはなりません。例えば、自動車や備品の減価償却費は面積比というわけにはいきません。
費用には、固定費と変動費があります。給料は、時間外手当等を除き、典型的な固定費で利用者があろうがなかろうが固定的に発生するものです。したがって、考慮する必要はありません。この結果、年によっては、災害支援事業の赤字が増え、給料の妥当性が問題になるかも知れませんが、それは経営の問題であって、会計の問題ではありません。