- 公益目的事業比率とは
- 公益実施費用等はどう捉えればいいですか
- みなし費用等はすべて強制ですか
- 特定費用準備資金繰入額は費用ではないのですか
- 事業費と管理費はどう区分すればいいですか
- 奨学金事業の貸出支出は事業費になりますか
- 関連費用はどういう基準で配賦するのですか
- 配賦が困難な費用はどうするのですか
- 公益目的事業へ利益を繰入れた収益事業等の費用は
- 公益目的事業比率はどの数値によるのですか
- ボランティアの人件費をみなし費用として事業費に加算できますか
- 公益目的事業についてだけみなし地代を加算することはできますか
公益目的事業比率は、公益法人が「公益目的事業を行うことを主たる目的とするものであること」(認定法5一)から、公益法人の活動全体における公益目的事業活動の割合がその費用額において50%以上であることを求めるものです。
次の計算式によって求めます(認定法5八、13)。
公益実施費用等は、損益計算書上の事業費、管理費を基礎に計算します(FAQⅤ-3-②)。これらは経常費用ベースのものです(認定規則15)。公益実施費用等は、これらに次のみなし費用等を加減したものです(認定規則16~18)。したがって、公益実施費用等の額は必ずしも損益計算書上の経常費用の額とは限りません。
前表の加減算項目のうちいわゆる「みなし費用」である所有土地のみなし賃借料、無利子又は低利融資のみなし利子及び無償又は低廉な役務の提供に係るみなし費用の3つは、強制ではなく任意です。これらの費用を見積もり、加算することもできますし、しないこともできます。また、特定費用準備資金繰入れも積立て限度額の制限はありますが、各事業年度の積立て額の規制はありませんのでその意味で任意です。
特定費用準備資金への繰入は、流動資産から固定資産への資産の振替えに過ぎず、貸借対照表取引です。本来の費用ではありませんが公益目的事業比率の算定及び収支相償の判定上は費用額に算入するものです(認定規則18、FAQⅤ-3-④)。
公共施設の維持管理を行っていますが、直接費用はなく、人件費、光熱水費、施設の維持管理費等これまですべて管理費に計上してきました。これらは事業費ではないのでしょうか。事業費と管理費はどう区分すればいいですか。
(1) 事業費と管理費の捉え方を見直す必要があります。
公益法人の会計は、従来は一本で管理されており、事業費に計上しても管理費に計上しても問題になりませんでした。しかし、新制度では、公益法人の会計は、公益目的事業会計、収益事業等会計、法人会計の3つに区分することになっており(認定法19、ガイドラインⅠ-18)、管理費は法人会計の費用となります(認定規則13)。ご質問のような捉え方だと公益目的事業に係る事業費はゼロですから到底公益目的事業比率や収支相償の認定基準はクリアできそうにありません。事業費と管理費の捉え方そのものを見直す必要があります。
(2) 事業費・管理費とは何か
これについては、次のように定義されています(ガイドラインⅠ-7)。
(事業費):当該法人の事業の目的のために要する費用
(管理費):法人の事業を管理するために、毎年度経常的に要する費用
問題はこの意味です。新・公益法人会計基準(平成16年決定)では、事業費を「事業の目的のために直接要する費用で管理費以外のもの」と定義していましたが、新々基準(平成20年決定)では、これを単に「事業の目的のために要する費用」に改めています(運用指針12)。
費用には、個々の物品又は役務の提供に伴って直接発生する直接費用(原価)とそれに関連して発生する間接費用とがあります。いずれも事業の目的のためのものであり事業費です。ガイドラインの定義は、これを踏まえたもので、事業費は直接事業費に限らず、間接事業費も含むということです。
(3) 事業費・管理費はこう捉える
ⅰ したがって、従来は事業管理費(間接事業費)を管理費に計上していた場合であっても、新制度への移行後は、事業との関連性に応じて事業費に配賦することができます(FAQⅤ-3-②)。すなわち、事業関連費は管理費に含めることもできるが、事業費に含めることもできるということです。
ⅱ そして、管理費について「管理費の例示」では法人自体の管理運営に係る費用だけが例示されています(ガイドラインⅠ-7)。すなわち、管理費を広く捉える必要はないということです。
ⅲ ガイドラインの例示を整理すると、次の表のようになります。
貸出支出は支出であって、費用ではありませんから事業費に含めることはできません。しかし、奨学金事業の全サイクルにわたって発生する人件費、事務経費その他諸経費は、奨学金事業に係る事業費と考えられます。また、管理費と共通する経費については、適正な基準で事業費に配賦することができます(FAQⅤ-3-③)。したがって、貸出支出を事業費に含めなくても、公益活動水準を公益目的事業比率に適正に反映できるはずです。
公益目的事業、収益事業等、法人の管理運営業務の複数の事業等にまたがって発生する関連費用は適正な基準によりそれぞれの費用額(認定規則13)に配賦しなければなりませんが(認定規則19)、参考基準として次のように示されています(ガイドラインⅠ-7)。
ただし、これは参考であって、これ以外に法人が適当と判断した基準があればそれによることができます。過去の活動実績、関連費用のデータなどから法人において合理的と考える程度の配賦基準を決めればよく、その算定根拠を詳細かつ具体的に記載することまで求められるものではありません(FAQⅤ-3-②)。
配賦基準 |
適用される共通費用 |
建物面積比 |
地代、家賃、建物減価償却費、建物保険料等 |
職員数比 |
福利厚生費、事務用消耗品費等 |
従事割合 |
給料、賞与、賃金、退職金、理事報酬等 |
使用割合 |
備品減価償却費、コンピューターリース代等 |
関連する事業等に配賦することが困難な事業は、次の費用の額とすることができます(認定規則19、FAQⅥ-2-③)。
関連する事業等 |
算入することができる費用 |
公益目的事業と収益事業等 |
収益事業等に係る事業費 |
公益目的事業(収益事業等)と法人管理業務 |
管理費 |
「事業等」とは?
「事業等」とは、「事業その他の業務又は活動」をいい(認定規則14)、公益目的事業と収益事業等からなる「事業」とこれら以外の法人の業務又は活動のことです。事業以外の業務又は活動とは、法人会計に属する法人の管理運営業務のことです。
「事業」と「事業等」は使い分けられていますが、「収益事業等」は収益事業とその他の事業のことで、法人の管理運営業務は含みません(認定法5七)。
ただし、これについては、次のような注意が必要です。
ⅰ これは、配賦することが「困難」な費用であって、それが「不能」な費用ではありません。費用の配賦は会計上の観点から行うものですから、原則として、すべての費用は配賦可能です。
ⅱ これに従って処理すると、公益目的事業比率等の算定上不利になります。これは「できる」であって、強制ではありません。
ⅲ したがって、これに従って処理していいのは、それでも差し支えがない場合に限ります。そうでない場合は、何らかの基準で合理的に配賦すべきでしょう。
ⅳ 公益目的事業又は収益事業等に配賦する費用には、それぞれの各事業にまで配賦することが困難な費用がありますが、それは公益目的事業会計等に「共通」の区分を設け、それぞれの事業費として配賦することができます(FAQⅥ-2-③)。
できません。あくまで公益目的事業に係る事業費です(認定規則13)。繰入れは、内部振替えで、それにより公益目的事業の側にも収益事業等の側にも新たな費用が発生するということはありません(ガイドラインⅠ-5)。
認定申請時には、提出する収支予算書(損益予算書)の対象事業年度に係る見込み額及び認定申請書別表B(公益目的事業比率の算定)に記載の数値によります(ガイドラインⅠ-7)。したがって、事業費と管理費の区分・配賦が基礎となります。
基本的にはできます(認定規則17)。ただし、
ⅰ 理事、監事、評議員については、報酬等の支給基準の定めに従いますので、理事等の職務の遂行の対価をみなし費用とすることはできません(ガイドラインⅠ-7)。つまり、理事等については、理事等としての仕事はみなし費用にできないが、それ以外のボランティアとしての仕事はみなし費用にできるということです。
ⅱ また、その役務の提供が法人の事業等の実施に不可欠でないとか、法人の監督の下に行われていないとか、市場価値を有するものではないときは、みなし費用の対象とはなりません(ガイドラインⅠ-7)。
ⅰ 公益目的事業以外の事業等の用に供している所有土地がある場合に、公益目的事業についてだけみなし地代を加算することはできません。ある費用をみなし費用にする場合、その費用については、すべての事業等について同じ扱いをしなければなりません。
ⅱ しかし、3つのみなし費用のうちある費用をみなし費用にしたら他の二つの費用もみなし費用にしなければならないということはありません。それぞれ任意です。したがって、すべての事業等について、地代だけをみなし費用にするということはできます。
ⅲ ただし、みなし費用は継続適用が原則です。したがって、一旦みなし費用扱いすると翌年度以降も正当な理由がない限り当該費用についてはみなし費用扱いしなければなりません。
ⅳ また、みなし費用は、公益目的事業に限らず、収益事業等又は法人の管理運営業務についても生じます。したがって、みなし費用は、どの事業等のみなし費用かを区分し、適正に配賦しなければなりません。