役員や評議員の変更があると、議事録を作成したり就任承諾書を取って役員等の変更登記をしますが、これらに押印する印は実印か認印か、実印は個人実印か法人実印(届出印)か、就任承諾書は要るのか・要らないのか大変悩ましい。今回は、これを取り上げますが、一般的な場合について説明していますので、場合によっては、これと異なることもありますからご注意ください。
- 役員等の変更の登記申請は、どのように定められているのですか
- 就任承諾書は必ず必要ですか
- 就任承諾書の印は実印でなければいけませんか
- 代表理事が交代した場合、法人実印は新旧どちらの印として扱えばいいですか
- 議事録署名と印鑑は、どうなっていますか
- 役員等はいつ就任し、退任するのですか。登記の時ですか
- 代表理事が任期満了で交代する場合の議事録署名は、どうすればいいですか
- 理事会議事録署名人を代表理事と定めている場合の代表理事選定理事会の議事録署名人は?
- 代表理事が議事録署名人に指定されていない場合に議事録に署名していいですか
- 役員改選を迎えますが代表理事を予め選定しておくことはできませんか
社団法人等の登記に関する基本的事項は法人法に定められていますが、商業登記法や商業登記規則の多くが準用されており、会社登記に準じています。役員等の変更登記も同様です。
これを整理すると次表のようになります。これを読む場合、次の点にご注意してください。
- 「印鑑証明書」の添付を要するとは当該添付書類にその者の個人の実印を押さなければならないということ、その添付を要しないとは認印でもいいということです。
- 「印鑑証明書」の添付(実印)の要否は、議事録と就任承諾書とで扱いが違います。
- 代表理事その他の法人の代表者とそれ以外の役員等で扱いに差があります。
評議員、理事、代表理事又は監事に選ばれた者がその会議に出席しており、その場で就任を承諾し、かつその旨が当該議事録に記載されているときは、就任承諾書の添付は不要です。
ただし、これは、登記手続き上のことで、法人のコンプライアンスの観点からは取っておくべきでしょう。
また、この特例を受けるためには議事録に出席役員等の氏名を記載しておくことが必要です。
就任承諾書の印につき印鑑証明が求められるのは、理事会非設置法人の理事又は理事会設置法人の代表理事についてで、それ以外の理事、監事、評議員につては求められません。これらの者については、認印で差し支えありません。印鑑証明も不要です。
法人実印は法務局(登記所)に届け出たその人に属するものですから、たとえ新旧代表者印が同じであっても新代表理事が改めて印鑑届をするまでは、届出印(法人実印)は旧代表理事のものですから新代表理事は押せません。
登記申請書に添付する議事録の署名(記名押印を含む。)は、次のようになっています。
ポイントは、代表理事の交代の有無にかかわらず、前(現)代表理事が法人届出印(法人実印)をもって議事録に署名していれば、他の議事録署名人は認印でいいということです。ただし、新任の新代表理事は個人実印を押します。
登記は対抗要件であって、登記の時ではありません。
- 就任は、役員等の選任(選定)がその効力を生じた時とその就任承諾が効力を生じた時とのいずれか遅い時です。
選任がその効力を生じるのは、任期満了に伴う選任にあっては定時社員総会(評議員会)の終結の時、補欠選任、代表理事の選定その他の選任(選定)にあっては選任(選定)の時です。ただし、始期付き・条件付きの場合は、始期到来又は条件成就の時です。就任承諾は承諾の時ですが、始期付き・条件付きの場合は同様です。
したがって、役員等改選期の就任承諾書は、承諾日を選任日又はその前にしておかないと就任日がバラバラになります。これを応用すると、逆に或る人の就任日だけを選任日後の一定の日にズラすることも可能です。新任者の都合でそうしたい場合です。
- 退任は、任期満了による退任は定時社員総会(評議員会)の終結の時、辞任はその意思表示が効力を生じた時、死亡は即時等です。
これらがはっきりしないと、誰が会議を招集し、議事録に署名すればいいのかなどあやふやになります。
- 理事選任に係る定時社員総会(評議員会)議事録
定時社員総会(評議員会)終結の時に理事を退任し、代表理事を退任しますので定時社員総会(評議員会)における代表理事は前代表理事ですから、同代表理事が会議に出席し、法人実印をもって議事録署名すれば、他の議事録署名人は認印で済みます。
- 代表理事選定(互選)理事会議事録
この場合は、次の二つに分けて考えることになります。
ア 前代表理事が理事に留まり、かつ会議に出席しているとき。
前代表理事が法人実印で議事録署名すれば他の議事録署名人は認印で済みます。イ それ以外のとき。
所定の議事録署名人全員の個人実印、印鑑証明が必要です。
なお、いずれの場合も新任の代表理事については、その個人実印、印鑑証明が必要です。
また、代表理事選定をみなし決議で行う場合にその議事録に前代表理事が法人実印を押してないと、全理事の個人実印(印鑑証明)が必要になりますのでご注意ください。
理事会議事録署名人を代表理事と定めている場合に、代表理事選定理事会の議事録署名人は出席した代表理事と監事でいいですか。
理事会の議事録署名人は、出席した理事及び監事ですが、定款に定めることにより出席した代表理事及び監事とすることができます。出席した代表理事がいない場合は、出席した全理事及び全監事です。
任期満了に伴う役員改選の場合、一旦全理事が退任し、改めて選定するまでは代表理事がいないことになるため議事録署名人は、原則に戻り、出席した全理事及び全監事となります。ただし、代表理事が再任になった場合は、登記実務上は、代表理事と監事でいいようです。
議事録署名人と指定された者は、議事録署名義務を負いますが、代表理事、理事その他の出席者が追加的に議事録に署名することは差し支えありません。また、評議員会の議事録だからといって評議員以外の者が議事録に署名してはならないというルールもありません。
できるという登記先例があります。しかし、それは次の3つの条件を満たした場合であり、これを活用できるのは極めて限られた場合でしょう。
- 社員総会(評議員会)で予選(期限又は条件付きで予め選任する決議)された理事が代表理事を予選するものであること(例えば、任期満了により6月の定時評議員会に諮る理事選任を3月の社員総会(評議員会)で予選し、その予選された理事が代表理事を予選すること。)
- その予選された理事が従来の理事と同一であること。
- 代表理事の予選からその就任までの期間が合理的な範囲内(例えば、1ヶ月)であること。