「公益法人」も、組織については、「一般法人」として一般法に規制されます。 したがって、「一般法人」といっても「公益法人」を含む一般法人全体を指している場合とまだ公益認定を受けていない単なる一般法人を指している場合とがありますのでご注意ください。
1 公益法人の本質と組織原理
設立者が一定の財産を提供することにより「一般財団法人」を設立することができますが、 その財産はもはや提供者の手を離れたものとなります。 それは「仲間のため」あるいは「世の中のため」にあるものであり、提供者のものではありません。
「非営利」とは?
「非営利」とは、営利を目的としないということですが、組織的には、構成員に利益を分配しないことをいいます。したがって、非営利法人である一般法人や公益法人は会社のように利益の分配を目的とする出資を期待することはできません。
「非営利」というと日常的には「儲けない」というニュアンスですが、法律的にはそういう意味はありません。公益法人の本質は、そういうところにあるのではなく、むしろどんどん儲けて、どんどんみんなに還元すべきです。
株式会社の場合でも出資は会社の財産となり、株主のものではありませんが、 株主は配当を期待でき、残余財産の分配を期待できます。これを「持分」といいますが、 「一般財団法人」の財産の提供者には持分はなく、これらを期待できません(一般法153)。 財団の管理運営についても、設立者はその意思を定款に盛り込むことはできますが、その後は、 その定款に基づいて管理運営され、設立者は介入できません。
「一般社団法人」についても事情は同様です(一般法11)。 営利組織である株式会社では株式数が議決権の基準ですが、「一般社団法人」や「公益社団法人」では 1社員1議決権であり(一般法48)、拠出額は組織の調整原理としては働きません。
このため、「一般社団法人」や「一般財団法人」は、広く 仲間やみんなのために供された物(財団)や人(社団) の結合を活かして、所期の目的を達成するには、どう管理運営すればいいかが 組織原理となっています。 公益認定に当たりこれを妨げるおそれがある欠格者が排除されたり、 特別の利益供与や特定の支配が排除されるのは当然です。
各法人の組織を定めるに当たってもこの観点から検討すべきです。
2 機関の構成
(1) 概要
次のとおりです。
(公益法人の機関)
一般社団法人 |
公益社団法人 |
一般財団法人 |
公益財団法人 |
社員総会 | 社員総会 | 評議員 | 評議員 |
評議員会 | 評議員会 | ||
理事 | 理事 | 理事 | 理事 |
(理事会) | 理事会 | 理事会 | 理事会 |
(代表理事) | 代表理事 | 代表理事 | 代表理事 |
(監事) | 監事 | 監事 | 監事 |
〔会計監査人〕 | 会計監査人(注) | 〔会計監査人〕 | 会計監査人(注) |
() :任意。ただし、理事会を置いたときは代表理事、監事が、会計監査人を置いたときは監事が必要
〔〕 :大規模法人(負債総額200億円以上)
(注):収入又は費用の額が1000億円未満かつ負債総額50億円未満なら不要
(2) 特例民法法人の経過措置等
- 新法施行の際現に選任されている特例民法法人の理事、監事は 一般法によって選任された理事とみなされますが(整備法48)、
- 法人を代表する理事は引き続き法人を代表することはできますが、一般法による代表理事の地位を有しません(整備法48)。
- 評議員、評議員会、理事会又は会計監査人を置く旨の定款又は寄付行為の定めは 新法に基づく定めとしては効力を有しません(整備法80,89)。法に基づかない任意規定となります。
- 新法施行前に定款変更、評議員の選任等をしても、もちろん新法に基づくものにはなりません。
一般社団法人、従って、公益社団法人も、社員は、定款で定めるところにより、 法人に対し経費を支払う義務を負います(一般法27)。したがって、定款に定めがなければこのような 義務を負いません。これは株主の出資義務とは違います。一般社団法人の本質をよく示しています。
各理事が法人を代表するのが原則ですが、代表理事を定めたときは、他の理事には代表権はありません。
3 基金
今回の改正で、一般社団法人に「基金」が制度化されましたが、 これは「正味財産」扱いで、通常いう「基金」つまり特定の目的のための積立金とか運用基金ではありませんし、旧基準の「基本金」でもありません。
- 基金は、拠出者に対して返還する義務がありますが、利息を附すことはできません。この点が負債(債務)とは違います。
- 基金は社員の地位とは結びついていません。社員であっても、 社員でなくても引受人になることができます。出資とはこの点でも違います。