- 収益を得る事業は公益目的事業には該当しませんか
- 利益を上げる事業は一般的に収益事業ではないのですか
- 公益目的事業かどうかは「公益」を目的とするかどうかによるのですか
- 公益目的事業に必要な収益事業は公益目的事業ですか
- 「不特定かつ多数」とは
- 公益目的事業と収益事業等の両方に該当するものはどちらですか
- 公益目的事業のチェックポイント、典型17事業とは
- 博物館での販売行為等は公益目的事業に該当することはないのでしょうか
- 行政機関からの受託事業でも公益目的事業になりますか
日常語的には、「収益を得る事業」は「収益事業」ですし、「収益事業等」は「公益目的事業」ではありませんので、そのように思いがちですが、これは間違いです。
認定法は、公益法人の事業を「公益目的事業」と「収益事業等」に2分しています。したがって、「収益事業等」に該当するものが「公益目的事業」になることはありません。
しかし、「公益目的事業」の収入がその実施に係る費用の額を超えてはならないという収支相償規定(認定法5条6号、14条)があることから明らかなように、認定法は、「公益目的事業」について収入が生じることを予定しています。また、チェックポイントの典型17事業には、通常収入を伴うことが予想される検査検定、講座・セミナー、調査・資料収集、施設の貸与、資金貸付の事業等が挙がっていますが、そのどこにも有償のものは「公益目的事業」としないとは書いてありません。
また、認定法は、「公益目的事業」以外の事業を「収益事業等」と定義しているのであって、「収益事業等」以外の事業を「公益目的事業」と定義しているのではありません。したがって、ある事業が「収益事業等」であるから「公益目的事業」ではないというのは、「公益目的事業」を捉える順序が逆です。
認定法は、「公益目的事業」について、「収益事業等」概念に依存せず、独立の定義を与えています(認定法2条4号)。したがって、まず何が「公益目的事業」であるかが定まり、それ以外の事業が「収益事業等」となるのであって、この逆ではありません。そして、この「公益目的事業」には、収益や対価を得る事業も含まれているということです。このため、法人税法上の「収益事業」と認定法上の「収益事業等」は一致しませんし、法人税法上の「収益事業」であっても、認定法上は「公益目的事業」に該当するものもあるということになります(FAQⅧ-1-③)。
ガイドラインは、収益事業等の区分経理との関係で、「収益事業」とは、「一般的に利益を上げることを事業の性格とする事業である」といっています(ガイドラインⅠ-18)。しかし、これは「公益目的事業」以外の事業である「収益事業等」の「収益事業」と「その他の事業」との区分をいうものです。「収益事業等」とは、「公益目的事業以外の事業」ですから「一般的に利益を上げることを事業の性格とする事業」であってもそれが「公益目的事業」に該当するものであるなら、それは公益目的事業であって、「収益事業等」ではありません。したがって、これをもって「一般的に利益を上げることを事業の性格とする事業」は収益事業であって、公益目的事業ではないとはいえません。
「公益」を目的とするかどうかで「公益目的事業」であるかどうかを直接的に判定するのではありません。旧制度とは、仕組みが違います。
整備法による改正後の民法は、「公益を目的とする法人」その他の法人の設立等については、民法その他の法律の定めるところによるとなっており(民法33条)、「公益を目的とする法人」については、一般法人法により法人を設立し、認定法により公益認定(特例民法法人は直接に)を受けることになっていますが、認定法は、「公益」を目的とするかどうかにより直接的に「公益目的事業」であるかどうかを判定する仕組みにはなっておりません。
整備法による改正前の民法が「公益」に関する社団又は財団であって、営利を目的としないものは、主務官庁の許可を得て、法人とすることができると規定していたことと比較すると、この違いは明らかです。
すなわち、旧制度の下では、何が「公益」であるかの認定権を主務官庁が留保し、専ら公益性の有無により公益法人の設立の許可をする仕組みでしたが、新制度においては、「公益目的事業」を「別表各号に掲げる種類の事業であって、不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するもの」と定めており(認定法2条4号)、各号には「公益」という用語はなく、事業を具体的に規定していますので、「公益目的事業」であるかどうかは、これらに該当するかどうかによります(FAQⅧ-1-①)。「公益」という抽象的、包括的な概念によって「公益目的事業」であるかどうかを直接に判定するのではありません。
なお、同表23号は「公益に関する事業で政令で定めるもの」といっていますが、同じことです。なお、現在この政令は定められておりません。
旧制度では公益目的事業と収益事業等を区別することなく法人全体としての公益性の有無が判定されていましたから、そのような主張もある程度可能だったかもしれませんが、新制度では、事業を公益目的事業とそれ以外の収益事業等に2分しており、公益目的事業とは、法定の事業該当性と不特定多数性の二つの要件を満たしているものと定義していますので、ある事業が公益目的事業であるかどうかは、その事業自体について判定することになります。法令の中には「公益目的事業を行うために必要な収益事業等その他の業務又は活動」という規定もあります(認定規則22③二)。
したがって、ある収益事業が公益目的事業の財源確保のために不可欠であるとしても、それをもって当該収益事業が公益目的事業であるとはいえません。つまり、間接的に公益目的事業に貢献しているというだけでは、公益目的事業とはなりません。
これは字義どおりの意味ですが、ポイントは「不特定」です。
つまり、「不特定」の者の利益の増進に寄与せず、「特定」の者の利益の増進に寄与する事業を共益事業とすると、共益事業は公益目的事業に該当しないということです。
同業者団体の事業とか行政からの受託事業のように、見方によっては公益目的事業であり、収益事業等であるというように二つの側面を同時に持っている事業は、どちらになるのですか。
法律は、公益目的事業について、法定の事業に該当し、不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与することを求めているだけです。したがって、それが同時に収益を得、又は特定の者の利益の増進に寄与したとしても、公益目的事業というに妨げないということになります。
したがって、このような場合、認定申請に当たっては、それが公益目的事業に当たることを明らかにすれば足り、収益事業等に言及する必要はありません。しかし、認定審査に当たっては、それが実際は業界団体の販売促進や共同宣伝になっていないか・不特定多数でない者の利益の増進への寄与を「主たる目的」にしていないかなどがチェックされるので留意すべきです。
認定法では別表の23事業であればいいはずです。ところが、公益認定等ガイドラインの「【参考】公益目的事業のチェックポイントについて」には17事業しかありません。事業の捉え方も違います。17事業しか認めないのでしょうか。どちらの分類で捉えればいいのでしょう。
公益目的事業の要件は、①認定法別表の事業であることと②不特定・多数の利益の増進です。このうち①の要件については既に法律が明示しているため、公益目的事業のチェックポイントは②の要件について示したものです(チェックポイント第1)。
したがって、公益認定を受けるためには、まず、事業が法別表の23事業のどれに該当するかを特定する必要があります。
一方、②の要件については、審査は、チェックポイントに沿って行われるため、これに沿って事業を分類、整理し、説明する必要があります。
しかし、事業の捉え方が①は目的分類、②は業態分類となっているため、結局、二つの基準により分類(二重分類・マトリックス分類)することになります。
そして、チェックポイントに特掲されたいわゆる典型17事業は、これらの典型的な事業についてチェックポイントを整理したものであって、これ以外の事業は公益目的事業ではないということではありません(チェックポイント第2,1)。そもそもチェックポイントは、それに適合しなければ直ちに公益目的事業でなくなるというようなものではありません。
典型17事業については、チェックポイントの要件を満たせば、それだけで②の要件は満たされているものとして扱われ、17事業以外の事業については、一般的な基準(チェックポイント第2、「2.上記の事業区分に該当しない事業についてチェックすべき点」)により②の要件が審査されるということです。
公益目的事業のチェックポイント「【補足】横断的注記」(1)で、「収益事業等は明確に区分する必要がある」として、「例えば、博物館で売店事業や食堂事業を営む場合、当該事業は博物館事業とは区分する必要がある」としていますが、博物館での販売行為等は公益目的事業に該当することはないのでしょうか。
チェックポイントは、典型17事業の一つとして「博物館等の展示」を挙げ、それを「歴史、芸術、民俗、産業、自然科学等に関する資料を収集・保管し、展示を行う事業」としています。したがって、売店や食堂の事業はこの「収集・保管、展示」には当らず、典型17事業に該当しません。だからといって、博物館での販売行為等が常に公益目的事業に該当しないとはいえません。博物館事業を典型17事業以外の事業として構成する可能性があるからです。
売店や食堂は、収益事業で博物館事業ではないと思いがちですが、それは必ずしも正しくありません。実際、図録の一つもなく、一息入れるコーナーもないような博物館が望ましいかというと疑問でしょう。不特定多数の来館者の利益を図るためではなく、自己の利益・収益の獲得を目的とするものは、公益目的事業に該当しないでしょうが、来館者のための図録販売やカフェーなどそれが博物館事業の一部であるときは、例え、それが収益を得え、典型17事業に該当しないとしても公益目的事業に該当する可能性があります。結局、公益目的事業をどう構成するかでしょう。
行政機関からの受託事業でも公益目的事業になりますか。公益認定等委員会は、一方で一般競争入札等によるものであってもそれだけで公益目的事業でないとするものではないといい、他方で行政機関からの受託事業であっても「単純な業務委託もあり、それだけで直ちに公益目的事業ということにはなりません」といっています(FAQⅨ-①)が、これはどういうことですか。
これは「行政機関からの受託事業であるからといって、それだけでそれが公益目的事業であるとはいえない」、「一般競争入札等によるものであるからといって、それだけでそれが公益目的事業でないとはいえない」というものですが、裏返していうと、「行政機関からの受託事業であるからといって、それだけでそれが公益目的事業でないとはいえない」ということです。
公益目的事業であるかどうかは、それが①法別表の事業に該当し、かつ②不特定・多数者の利益の増進に寄与するものであるかどうかによることとなっており(認定法2条4号)、このことは、それが行政機関からの受託事業であり、または一般競争入札等によるものであっても例外ではありません。結局、これらについても法律が定める①②の基準によって判定することになります(FAQⅨ-①)。
行政機関からの受託事業の中には様々なものがあります。単に行政事務の一部の処理を委託するに過ぎない清掃業務委託や工事設計委託もあれば、災害時の物資供給など直接住民等へのサービス提供を内容とするものもあります。あるいは、同じ調査研究委託であっても行政機関のためだけのものもあれば、その成果を社会に公開し、知識の普及、研究の促進を図る目的のものもあります。したがって、受託事業が「公益目的事業」に該当するかどうかは、あくまでその内容によるのであって、一概にはいえません。例えば、清掃業務委託や工事設計委託等の「単純な業務委託」は、行政事務の執行ではありませんし、その受益者は行政機関自身であって、「不特定かつ多数の者」ではありません。したがって、これらは「公益目的事業」には該当しないでしょう。
受託事業とよく似たものに指定管理制度があります。しかし、これは住民の福祉の増進を目的とする公の施設の管理を行政主体に代わって行うものであり(自治法244条の2)、民事上の契約である受託ではありません。したがって、これについては、地方自治法の契約に関する規定(自治法234条以下)の適用はありません。業務委託は部分的かつ事務の処理の委託ですが、管理指定は行政事務の包括的な委任という特性もあります。したがって、受託事業と指定管理業務とは区別すべきものですが、やはりこれについても法が定める要件を満たしているかどうかで判断するしかありません。